私のお墓の前で泣かないでください

日本文化における「お墓」とは、単なる墓標としての役割以上に大きな意味を持つものでもあります。
日本の伝統的な家制度とは、このお墓を守るための制度と言い換えることもでき、先祖代々伝わるお墓を守ることができるかどうかということが、家族の絆を確かめる上でも大切なポイントとなっています。
欧米諸国や他の宗教文化を持った国々のように、火葬をしない土葬においてはお墓とは基本的に一人につき一つ建てられるもので、日本のように複数の人を一箇所にまとめて供養するという方法はほとんどめったに見かけることのないものです。
そのため、日本におけるお墓には独自の風習があり、新しく作るときにはきちんと守っておくべきしきたりがあります。

ところで、なぜ墓標の材質は必ず「石」なのでしょうか?
墓標の形はそれぞれ風習や文化によって異なることはよくありますが、基本的に墓標として加工をされるのは石ときまっています。
答えは、石は大地とのつながりを示す聖なるものとして意味があるからと、石の重みによって一度亡くなった者が再びこの世にさまよいでてこないように蓋をして封じ込めるという意味があるためです。
そのように書くと、特別に科学的根拠があって石が選ばれているのではないのだから、別の材質でもよいのではないかと思う人もいるようですが、その文化的背景故に、新しく別の材質は受け入れられないという性質があるようです。
実際、石を使わない墓標というものをあるメーカーが販売したこともありましたが、全く販売数は伸びることなく消えていってしまったようです。
石は日本古代からの書物にもよく登場してくる、精霊の力の象徴です。
石と生命との関わりを最もよく示しているのが、イザナミノミコトが黄泉の国へ行った時、追いかけてくる死者を遠ざけるため大石を出口に置いて防いだという物語です。

一般的に日本の墓地で見かけるお墓は「和型墓石」という長方形の縦に長い形をしているものです。
和型墓石のデザインのもととなっているのは、中国から伝わった「位牌」ということで、きちんとこの形状に統一されるようになったのは、江戸時代の後期ころからと言われています。
最近では、和型墓石とは違う横長の長方形を置いた洋型墓石も数を増やしてきているようです。洋型墓石の場合、表面には家名だけでなく好きな言葉や写真などを入れることができるため、生前の個人らしさを墓標として残すことができる点が人気となっています。

 

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